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ありけんエッセイ集


有田健太郎のエッセイコーナーです
by a-k_essay
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福島県沿岸、日帰りロケの旅

田舎…とも言い切れない、あたり障りのない車窓が続く。
夏空は高く、まばらな雲はモクモクとしていて。
上野発8:24 常磐線勝田行き。
コーヒーとハイソフトが置かれた窓際には、やっぱり僕が映っていた。


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〜2007年8月 福島県沿岸、日帰り夏旅〜


12月にリリースとなるアルバムのジャケット写真の撮影のため、福島のある駅を選んだ。
アルバムタイトルから、どうしても砂浜や線路、駅の写真がほしかったんだ。
だけど季節は夏、関東近郊の海はきっと人でごった返しているだろう…。
そう思った僕は、地図と航空写真と長年の旅の感で、よさそうな場所を探した。

『末続(すえつぎ)駅』(福島県いわき市の北の方)

大抵、線路と海の間には道路が走っているが、この駅は線路と海の間に幹線道路が走っていない。
航空写真から見ても砂浜が続いているようだし。
田舎そうだし。
「まあ、、行けばなんとかなるでしょう」(それがだめなんだな…)

予算は少なく、『青春18切符』には2つのハンコが押された。

「やっぱり旅は上野からだよ!」

「きっと素敵な夏の思い出になるよ!」

そうそそのかされて同行しているカメラマンの大友君(後輩)は、後にひどい目に遭うことをもしかしたらこの時薄々感じていたかもしれない。


上野を出て5時間が過ぎ、ようやく目的地が近づいてきた。
トンネルを抜けるごとに急速に自然に囲まれてゆき、やっと着いた無人駅の『末続』はまるで南国のような土地だ。


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【ホームからは海】



3両編成のワンマン電車は、とても長いホームに僕らを降ろし仙台方面へ曲がっていった。

おお〜

なんだかすごい田舎パワーだ…。
セミ達がうるさく無関心に鳴いている。


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【線路は熱気でゆらゆらしている】



日影も少ない14時前。
駅を出ずにホームを降りて、トンネルの方に歩いてみた。

「大友、、ここは当たりだぞ!」

「そうっすね〜」

トンネル付近で写真を撮り(ほぼ記念撮影)、そのまま集落へ降りることにした。


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なんだか南国に来たみたい。
いいとこだぁ。

「とりあえずお店を探して飯にしよう」

「そうっすね」

しかし集落に家は10数軒程しかなく、買店どころか自販機すらなかった。

はぁはぁ…

僕らは飲み物を求めて駅に戻ることにした。

はぁはぁ…

しかしこの駅(無人)に自販機などなかった。

「やばいっすね…」

水は本当に大切である。
以前、福岡県の海の松林で遭難しかけた時、脱水で軽く熱中症になった時のことを思い出した。

僕は思った。
なんて駅だ…

さらに思った。
大友…ごめん


僕らは水を求めて隣駅まで戻ることにした。
しかし1時間に1本の電車は出たばかりで、まるまる1時間の待ちである。
それに、1時間かけて戻ってさらにまた1時間かけて戻って来なければならないなんて(水のために)。

あまかった。
ごめん常磐線…、ハンパな路線だと思ってました。
やっぱりすごいところはあるね。


じじじじじじ…
しかしセミは元気だなぁ。

大友君は、待合室で別の仕事の書類を見はじめた。
じっとできないタチの僕は、カメラをもって再び線路に降りた。

しかしこの駅は魅力的だ(飲み物ないけど)。

僕は時と水を忘れ、写真を撮った。
気がつけば駅からずいぶんと離れてしまっていた。

水、、、

しまった

僕の脳裏になぜかピラミッドとラクダが浮んだ。
SMAPが出演するポカリスエットのCMの、ガイコツになる場面も浮かんだ。

うう〜

ひからびかけた僕は、小さな鉄橋に腰を下ろした。
その時、、僕は発見したのだ。
遠くに街道があって、そこにオアシス(ラーメン屋)があるのを。


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「おおとも〜、助かったぞ〜!!」

じゃりじゃりと乾いた線路を走り、大友君にオアシスの存在を伝えた。

あと10分で来る電車を捨て、僕らはラーメン屋で水とラーメンを注文した。


ふぅ〜


ラーメン屋の自販機でたくさんのスポーツドリンク等を買い、僕らは今度こそ海へ向かった。


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海に出て、僕らは立ち尽くした。
なぜなら砂浜なんてこれっぽっちもなかったからだ。

陸は崖で、その浸食を防ぐためテトラなのだろう。
数トンのコンクリート地面がめくれ、数トンのテトラが飛ばされているのを見て、太平洋の波の凄まじさを怖く思った。

「心配するな大友!」

「ずっと歩けば砂浜が出てくるけん!」

しかしどれだけ歩いても砂浜は出てこなかった。

そのうち大友君はあまりしゃべらなくなった。

航空写真で砂浜のように見えたのはこのテトラだったのか…
しっかり写せよヤフー。
だいたいあの航空写真、アップにした時ごまかしてるだろう…

いかんいかん、だんだん愚痴っぽくなってきた。

足も棒のようになってきた。

「大友、やっぱり潮風は気持ちいいな〜!」

「…」

まずいっす。


僕は昔行った、青森県下北半島の恐山の三途の川を思い出した。
なんか地獄みたいな所だなぁ。

そりゃ自販機もないさ。
ちっこいカニがいるくらいだ。

地獄でジャケ写撮影か…。
やるなー、おれ。



駅に戻る夕焼け道は、綺麗だった。
ここは、漁村じゃなく農村なんだな。

17時前。
夕日を背に電車を待つホームから見る集落と海は、やっぱりいい景色だった。
砂浜さえあればパーフェクトだったのに。

(どうしても砂浜に行きたくなった僕は、この後となりの駅で砂浜の有無を聞いて、タクシーで浜に向かいギリギリで写真に収めたのだった。)



僕らが上野駅に着いたのは22:29。
いやはや、日帰りの旅。
実際歩いたのは数時間だったけど、全く着飾ってない景色は良くも悪くもこの土地そのものだったね。

大友君の写真はまだ見てないからなんとも言えないが、夏のよい思い出になるでしょう(笑)。



しかし、あのテトラの海。

あそこは絶対、魚が釣れる。
だって誰もいないもん。
いつか釣り竿もって行こう。


飲み物と弁当も持ってね。


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【点と線の出会い】



ねこじゃらしは、ずっとこの土地で生きてゆくでしょう。
線路は、遠くまだ知らない町へと続いてゆくでしょう。

カメラ越しの僕は、双方に敬意を。

そしてこれからも、天と千の出会いを求めて帰ってゆく。
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by a-k_essay | 2007-08-13 21:44
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